年度末のある日、会社の後輩が「医療費控除ってなんですか?お得になるって聞いたんですけど」と言ってきました。
僕は都内の中小企業で働いている普通のサラリーマンです。
数年前、ファイナンシャルプランナーの資格を取得したんですが、資格を生かしたことはなにもしていません。
特に起業したいからというわけでもなく、お金のことは何かと生活にかかわってくることだし、勉強しておいて損はないだろう、くらいに思っていました。
後輩は僕がファイナンシャルプランナーであることを誰かから聞いたのでしょう。僕は分かる範囲でね、と言って説明してあげることにしました。
「長くなるけど、しっかり聞いて少しでも税金が戻ってくるように勉強しよう」
そもそも医療費控除ってなに
僕達サラリーマンは税金については会社に任せておけばいいと思ってるよね。
でも、自身で申告しなければ税金の控除が受けられないものがあるんだ。それが「医療費控除」なんだよ。
医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに自己または自己と生計を一とする配偶者やその他の親族のために支払った医療費のうち一定の金額を所得から控除することができる、という税制の仕組みなんだよ。
この医療費控除額を計算するには、その年の「医療費」がいくらかを知らないとダメなんだ。
所得税とは、その年の「所得から経費を引いた金額」に税率を掛けたもの。
つまり、所得税を少なくするには、その年に掛かった「経費」漏れの無いように申告すれいい。
医療費もこの経費にあたるので、これを加えることで所得税が減って、払い過ぎていた分の税金が戻ってくるんだよ。
医療費控除で10万円はいくら戻る?計算する方法は?
(2)総所得金額によって医療費控除の金額が違う
僕らが会社からもらった源泉徴収票を見ると「給与所得控除後の金額」って欄があるだろ。
これはサラリーマンの僕らがもらう給与所得に応じた税率を掛けた金額を給与所得から引いた金額のこと。
これを「総所得金額」とも言うんだよ。
総所得金額が「200万円以上」の場合は、一年間の医療費から「10万円」を医療費控除出来る。
一方、総所得金額が「200万円未満」の場合は「その収入に5%を掛けた」金額が、医療費控除額なんだ。
これでなんとなく分かったと思うけど、「医療費が10万円以上」でなくても医療費控除が受けられそうだよね。
もっとも、その年に掛かった医療費で「医療費控除できる金額は200万円まで」となっているので覚えておいてね。
(3)医療費控除額を計算してみよう
ここでは、昨年の僕の医療費を例にして説明してみようか。
我が家では妻が妊娠・出産したんだけど、妊娠中の診察や分娩費、病院までの交通費などでおおよそ55万円掛かったんだ。
でも、ありがたいことに健康保険から「出産一時金」として「46万円」が支払われたんだよ。
この「出産一時金の46万円」は医療費控除額の金額には含まれないことになっている。
一時金は自分の所得ではないからね。
だから
55万円ー46万円=9万円
これが出産に掛かった医療費控除額。
この他に僕や家族が風邪やインフルエンザにかかって治療した医療費が「1万円」掛かったとしよう。
これは、「健康保険を使った後」の医療費なのでそのまま「医療費控除額」になる。
くどいようだけど、医療費控除額には生計を同じくしている親族などの医療費も含まれるだよ。
僕の場合だと同居している子供とか父や母がそれにあたる。このこともしっかり覚えておいてね。
さて、僕が昨年に支払った医療費の合計は
9万円+1万円=10万円
この10万円の医療費をもとに、その年の総所得金額が「200万円以上」の世帯と「200万円未満」の世帯について説明しようか。
その年の総所得金額が「350万円」の世帯の場合、つまり「200万円以上」の世帯は、
医療費から10万円を引いた額が所得から引かれるんだったよね。
10万円―10万円=0円
この世帯の場合は、医療費控除の金額は「0円」ということだね。
次にその年の総所得金額が「150万円」の世帯の場合。
総所得金額が「200万円未満」の世帯は「5%を掛ける」だったよね。
これを式にして整理すると
10万円―(150万円×5%)=2万5千円
となる。
所得の少ない世帯のほうが、こんなに医療費控除ができるんだ。
医療費控除は金額がいくら以上だとやるべき?
ここまでのことをまとめてみよう。
総所得金額が「200万円以上」の世帯は医療費が「200万円の範囲で10万円以上」だと
、10万円を医療費から引いた額を所得から控除できる。
でも、10万円を数百円超えただけなら、その手間を考えるとやる価値があるかは疑問だね。
一方、総所得金額が「200万円未満」の世帯なら「その年の総所得金額×5%」より医療費が多ければ医療費控除を申告した方がいいと思う。
この場合も戻ってくる金額によると思うけどね。
(4)源泉徴収票で確認しよう
僕らサラリーマンは年末に源泉徴収票をもらうよね。
それで実際に控除額がいくらかを、改めて確認してみようか。
「給与所得控除後の金額」と「所得控除の額の合計額」の欄にそれぞれの金額が書いてあるだろ。
「給与所得控除後の金額(総所得金額)」が3,500,000円
「所得控除の額の合計額」が993,300円
と、あったとするだろ。
3,500,000円-933,300円=2,566,700円
2,566,000円(千円未満は切り捨てことになっている)
2,566,000円×税率(10%)=256,670円
256,700円
(ここでは、百円未満切り捨て)
これが、源泉徴収票に書かれている「所得税額」なんだ。
この計算式は「200万円未満」の世帯も同じだよ。
ここまで説明が長かったけど大丈夫かな?
(5)年末調整で税金が戻ってくる
さっきも話したけど、会社は毎月の所得税を概算で申告してるよね。
だから、その年に掛かった経費を計算して税務署に申告すると、払い過ぎた税金が「戻ってくる」。
(少ないと追加で徴収されるけどね…)
その制度のことを「年末調整」って言うんだ。
例えばこんなもの。
基礎控除(誰でも一律38万円)
配偶者控除
配偶者特別控除
扶養控除
障害者控除
寡婦控除
寡夫控除
勤労学生控除
社会保険料控除
生命保険料控除
地震保険料控除
住宅ローン控除
これらに該当するものがあれば「年末調整の書類に記入」して会社に提出しよう。
これは大きな節税対策になるので、しっかりやっておこうね。
まとめ
①控除を受けるための金額が多くなった、つまり総所得金額から控除できる金額が増えれば、納める所得税が少なくなる。
②医療費控除は年末調整では出来ない。
つまり会社ではやってくれないので、自身でやるからちょっと面倒くさい。
③医療費控除は、「年末調整した後の最高税率」と「医療費控除した後の最高税率が同じ」であれば、「戻ってくる税金は多くなる」ということ。
(6)医療費控除をすると所得税以外に減る税金もある
住民税分
医療費控除額×10%
この分の金額が、次年度の住民税で少なくなる。
復興特別所得税
所得税額 × 2.1%
こちらも確認しておくといいかな。
僕が説明できるのはこんなところかな。
実際に税金のことで正式にアドバイスできるのは、税理士さんだけなんだ。
だから、医療費控除できるものはなにか、「これって医療費控除の対象かな?」と迷ったら、税理士さんか国税局に問い合わせるといいよ。